日本の借金の額は約1,087兆円あります。(平成30年3月末基準)
が、「日本は他の国と違うから大丈夫」とよく言われます。
どういうことなのでしょうか。簡単解説!と今後の話です。
もくじ
日本は誰から借金してる?
国債を持っている人でわかる!
国は借金をすると、借りた証として、貸してくれた人に「国債」というものを渡します。
国債を保有している人が「国にお金を貸している人」=「国がお金を借りている人」です。
では、誰がどれだけ国債を保有しているのでしょうか。
グラフを見ていただければわかるように、国債を持っているのは
■中央銀行(日銀)
■民間銀行
■保険・年金基金
■公的年金
・・と続き、国内の金融機関が90%以上を占めます。
国は国内の金融機関からお金を借りているわけです。
では、この金融機関はどうやって何百兆もの莫大なお金を国に貸せるのでしょう。
金融機関はどうやって莫大なお金を国に貸せる?
例えば銀行だったら、国債を買うお金は「国民の預ける預金」から出しています。
つまり、国は間接的に国民からお金を借りているということです。
では、国がお金を返せない!ということになったら大丈夫なのでしょうか。
結論から言うと、現状は大丈夫です。
大丈夫①日本が日本人からお金を借りているから
そもそも、国がお金を返せない!という事態は起きません。
どういうことかと言うと・・・
日本がお金を借りているのは日本国民でした。
国民は日本円を返して欲しいわけですが、では、日本円は誰が作っているのか?
国です。
つまり、最悪、日本は日本円を刷れば、国民に借金を返せるので、そもそも国がお金を返せない!ということは起きないのです。
お金を刷ったらインフレになる!って思われた方もいるかもしれませんが、現に、お金をたくさん刷っているのに、インフレにはなっていませんね。(これはまた別の記事にて)
もしアメリカ人からお金を借りていたら?
もし、日本がアメリカ人からお金を借りていたら・・・
アメリカ人はドルを返して欲しいので、日本は日本円をたくさん刷って、ドルに変えます。
つまり、ドル買い円売りをするということです。すると、当然ですがドル高になります。
ドル高になったら、アメリカは輸出で不利になりますね。
そんなことをアメリカが許すと思いますか?
許さないですね。外交環境が悪化するようなことは、日本はしないでしょう。
日本が外国から借金してたら、お金を刷って解決!はできないのですが、日本人に借金していたら、刷って解決!ができるのです。
大丈夫②メインの国債保有者が日銀だから
上に示した国債の保有者内訳を見ると、メインの国債保有者は日銀です。
日銀は、デフレ脱却の名の下に、異次元級の国債買い入れをしています。
国債の保有者というのは、「国にお金を貸している人」の証でもありました。
つまり、国は、日銀に利息を払い、返済満期がきたら日銀にお金を返さないといけないわけです。
この「借金の相手が日銀であること」で、2つのメリットが生まれます。
■日銀は政府の銀行。利払いが痛くない
日銀はお金を刷る権利を国からもらっている代わりに、国に利益を支払わなければいけません。
となると、国→日銀への利息の支払いは、経費を差し引いたとしても、結局は国に納める利益なので、痛くないのです。
■日銀乗換という手段
では、返済満期がきたらどうするのでしょう。
本来は、「税収を上げて、返済していく」べきですが、これだけでは、現状大量の国債を消化(借金返済)できません。
そこで一つの方法として挙げられるのは、「日銀乗換」です。
日銀乗換とは、国 → 日銀への借金返済を、現金の代わりに「1年後に返す証(1年物割引短期国債)」を発行して、そちらで返済を延期にするというものです。
これを毎年行っていれば、事実上、現金の返済は延期されていることになります。
(1年後がきたら、再び「1年後に返す証」で返済代わりにすることも可能ですが、現在は現金で返済が行われています)
大丈夫③対外資産が潤沢にあるから
以下の図のように、夫婦間の貸し借りは、その家庭の資産を見る時に考慮しませんね。
国の資産を考える時も同様で、国内の貸し借りは考慮しません。
何を見るかというと、対外での貸し借り(家庭外との貸借り)を見ます。
実際に見てみると、日本は、夫婦間では借金があるものの、対外では世界第1位の貯金(下図の「対外純資産」)があるのです。
↑緑の文字は家庭のお金で表した時の例です。
※ちなみに、アメリカの対外純資産は、マイナス1,000兆円ほどなので、実は貯金のない国です。
この日本の多額の貯金は、「円」がリスクに強い資産となっている要因でもあります。
海外からの評価は、「夫婦間で借金しているけど、最悪、夫がお金を刷れば問題ないし、貯金は大量にあるから、家計が破綻するようなことはない・・・そんな国」な訳です。
結論:今は大丈夫。でも今後は?
上記から、
■国内債務について
「国が借金 → 貸し手である民間銀行が国債保有 → 刷ったお金でその国債を日銀が買う → 日銀乗換をして国は借金返済延期」という、一連の流れに乗れば大丈夫。
■国外債務について
「貯金が潤沢にある」ため大丈夫。
と言うことがわかりました。
しかし、将来については、懸念事項もあります。
将来の懸念事項
■国内についてー永遠に日銀乗換はできない?
「日銀乗換を無限に繰り返し、事実上の借金返済免除」と言うのは、上記の③が行われないことを意味します。③が行われないのは、事実上「日銀がお金を刷って政府にパスしているだけ」と言うことになりますね。
現在は、日銀乗換を無限に繰り返しているわけではないので、免除ではなく延期と言う形になっていますが、仮に、これを無限に認めてしまうと、国は、無限に借金してもお金を刷って解決すればいいことになるわけです。
そうすると、「社会保障費が足りなかったら・防衛費が足りなかったら・企業が潰れそうになったら、借金してお金刷って返済免除」が可能になってしまい、世の中にはお金が溢れ、お金の価値は暴落します。
実際、総理大臣も務めた高橋是清は、日銀引受というものを行い、「借金してもお金を刷って返済免除」状態を作り上げました。
デフレ脱却には大きく威力を発揮したのですが、「無限に借金してもお金を刷って返済免除」と言う打ち出の小槌は、いざ取り上げようとすると、予算の欲しい軍部などから大反発が起こり、高橋是清は暗殺され、悪性のハイパーインフレが起きてしまいました。
高橋是清自身は、永遠にこれを行うつもりはなかったようですが・・・。
現在は、日銀引受は禁止されていますが、条件付きで日銀乗換という形が認められています。
日銀乗換は、無限に繰り返さなければ、返済免除ではなく延期という状態なので、高橋是清のものとは異なるのですが、それはつまり、今現在、返済を延期している国の借金は、永久債とでもしない限り、いずれ国債の保有者日銀へ現金を返さなくてはいけなくなるのです。
■国外についてー対外純資産を増やし続けられる?
現在は、対外純資産が潤沢にあるため、問題はありませんでした。
この対外純資産は、経常黒字によって大きくなってきましたが、将来、人口が減少し、労働力が減る日本は、このまま対外純資産を大きくできるでしょうか。
高齢化による貯蓄の取り崩しも、経常黒字の押し下げ要因になり得ます。対外純資産が目減りすることも、長い目で見たらありえない話ではないのです。
結局、国力を伸ばすしかない
では、いずれやってくる国内債務の返済や対外純資産の減少に対する解決策は何でしょうか?
これは、物価の安定と経済成長しかないのではないでしょうか。
日銀が掲げる物価上昇率2%を達成すれば、国内債務は目減りします。(住宅ローンが100万円あっても、インフレが起きて家の価格や給料が10億にでもなれば、100万円の借金なんて痛くないですね。それと同じです。)
また、経済成長をすれば税収も対外純資産も増えるでしょう。
「日本のお金を効率よく成長分野へ投資し、無駄は削減していく」これに尽きるのかもしれません。